日本アルプス 信仰登山

神を思わせる「何か」に誘われて

いにしえより、山岳信仰が盛んだった日本。富士山を筆頭に、霊山と崇められる山々が各地に点在しています。日本アルプスでいうと御嶽山や立山など。山々は修験者たちの行場となり、江戸時代には庶民の登拝も盛んに行なわれました。
今なお続く御嶽信仰は、死後の魂の憩いの場を御嶽山に求めたもの。立山信仰は入山することで死を、無事下山することで生まれ変わりを意味します。現在は衰退したものの、その宗教観は歴史の一部として麓で伝え継がれています。
このように、信仰ごとにもたらされるものは異なりますが、山のなかに身を置くことでこそ得られるものがあるという点は共通です。山という美しくもあり、厳しくもある自然環境には、神を思わせる「何か」が存在するのかもしれません。それを先人たちは肌で感じとり、そこから自分自身を見つめ直したのでしょう。
現代に生きる私たちも、普段楽しんでいるアクテビティとしての登山から一歩踏み込み、かつての信仰登山になぞらえた「心の旅」に出かけてみてはいかがでしょうか。山の宗教的背景を知り、自身の五感をフルに働かせながら一歩、また一歩前へ進むとき、心に芽生える感情。それぞれの人が、それぞれに感じる何かがきっとあるはずです。

御嶽山をご神体とする御嶽信仰。現在も山麓に残る御嶽古道をとおり、途中、清滝などで身を清めてから山頂をめざしました。

立山信仰は、麓の芦峅寺集落で布橋を渡ることから始まります。これは擬死にあたり、立山に登頂して無事下山することで再生を意味します。

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