御嶽古道と御嶽信仰登山

古道を歩き、滝に打たれる。登拝前のアクションが鍵に

長野県木曽町・王滝村、岐阜県下呂市・高山市にまたがる、標高3067mの御嶽山。活火山として知られ、2014年に噴火した際は死者・行方不明者63人の犠牲をだしました。現在、噴火警戒レベルは当時の3(入山規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げられましたが、火口から約1km範囲は立ち入り禁止(一時的な規制緩和期間を除く)になっています。
登山口は長野、岐阜側を合わせて4か所。ロープウェイが利用でき、日帰り山行も可能です。一般的なのは黒沢口ルート。御岳ロープウェイで五合目から七合目まで一気にのぼり、そこから約3時間半で御嶽神社奥社がある、主峰・剣ヶ峰に立つことができます。
今回、信仰登山をなぞる旅で注目したいのは、登山の前段階。王滝口ルートの登山口にいたるまでの山麓に、「御嶽古道」と呼ばれる歴史香る道が残っています。ここにある御嶽神社里宮で祈祷を受けたり、清滝で滝行をすることで心身を清め、霊山に登る準備をしていきます。御嶽古道を歩けば、御嶽信仰とは切り離せない「霊神碑」があちらこちらに。静けさに包まれた古道を歩くだけでも、心に安らぎを覚えるはずです。

御嶽信仰とは

開山は702(大宝2)年といわれる御嶽山。平安時代には修行のために登る修験者が徐々に増えていきました。一般民衆に開放されたのは江戸時代になってから。1784(天明4)年に尾張の行者・覚明により黒沢口が、1794(寛政6)年に武蔵の行者・普寛により王滝口が開かれると、御嶽信仰は全国に広がっていきました。集団で登拝する「講」が結成され、御嶽講と呼ばれるように。明治時代に入ると、政府の方針で複数の神道教団に組織化されました。

御嶽山そのものを崇める御嶽信仰。死後の安住の地を御嶽山と定め、魂は山に還ると説いています。御嶽神社は山頂に奥社、山麓に里宮などがあり、夏山シーズン中は白装束に身を包んだ全国各地からの信者でにぎわいます。

霊神碑とは

死後の魂が御嶽山に還るよう祈願し、講ごとに建立した石碑。御嶽古道や登山道の脇に、御嶽山全体で約2万基を超える霊神碑が林立しています。ほかでは見られない、信仰の深さを物語る独特の光景です。

かつて二人の行者により、開かれた由緒ある黒沢口ルートと王滝口ルート。それぞれに古道が残り、一帯には御嶽信仰と関わり深い神社や滝などが点在しています。登拝登山と合わせ、山麓でも往時の面影にふれてみましょう。

御嶽古道 主な信仰関連箇所 王滝口

御嶽神社王滝口里宮

御嶽山の一合目にあり、社叢に茂るのは木曽五木と呼ばれる5種類の常緑針葉樹。451段の石段を上り詰めると、高い岩壁を背に社殿が建っています。ご祭神は国常立尊、大己貴命、少彦名命。湧き水は「信州の名水・秘水」に選ばれています。

御嶽古道

一合目の御嶽神社里宮から五合目の八海山神社にいたる道。舗装道路になった箇所もありますが、うっそうとした木々の間に続く山道を歩けば、ふと昔日にタイムスリップしたような感覚に。道中、大又三社や十二大権現などがあります。

大又三社

三合目にある383段の急な階段の先に、ひっそりとたたずむ三体の銅像。御嶽三大神と呼ばれる御嶽山座王大権現、八海山大頭羅神王、三笠山刀利天宮です。御嶽山の各霊場に参拝できない信者のために奉祀されています。

新滝・清滝

三合目と四合目の中間に流れ落ちる二つの滝。新滝はかつて「神滝」と呼ばれ、修験者にとって100日間におよぶ本格的な潔斎の場でした。周囲に轟音を響かせる清滝は、登拝が大衆化して以降、清めの滝として利用されています。

十二大権現

四合目に鎮座。普寛行者が富士山の神である木花開耶姫命を習合し、祀ったと伝わります。子授け、子育ての神として親しまれ、祈願成就した際は「猿ぼこ」という小さな人形を12体供える習わしがあります。

八海山神社

普寛行者は御嶽山を開山後、弟子の泰賢行者と越後の八海山を開きました。そのご祭神である国挟槌尊を、ここ八海山神社に勧請したと伝わります。社殿裏のご神水は眼病平癒のご利益があるといわれます。五合目に鎮座。

御嶽古道 主な信仰関連箇所 黑沢口

御嶽古道

覚明行者ゆかりの古道。JR木曽福島駅から徒歩10分の行人橋を起点に、御嶽神社別殿、若宮、里宮を経由し、十二権現、大祓滝、八海山大神、白川大神を経て、御岳ロープウェイの山頂駅手前の六合目に到達します。

御嶽神社黒沢口里宮

御嶽神社里宮は王滝口ルート同様、黒沢口ルートにもあり、こちらは二合目に位置します。108段の石段を上り、社殿へ。王滝口の里宮に比べ、こぢんまりとした、たたずまいです。里宮のほど近くに若宮が建っています。

大祓滝

四合目にある鳥居をくぐった先に、落差8mの大祓滝が現われます。明治から大正期にかけ、造られた人工瀑です。その名のごとく、信者が精進潔斎の水行をし、心身を清めたうえで登拝に臨んだ場所でした。

霊神碑群

御嶽古道には、御嶽信仰の行者を祀る霊神碑が断続的に並んでいます。大祓滝あたりからさらに先に進んだ松尾滝付近には、霊神碑が多数。護摩堂原という地名から護摩堂原霊神場と呼ばれています。

八海山大神

五合目には王滝口ルートと同じく、国挟槌尊を祀る八海山大神があります。眼病に苦しむ人が祈願し、お告げのとおり境内の清水を眼に注いだところ、完治したという伝説が残ります。ここから中央アルプスの眺望が抜群。

白川大神

三笠山を越えた先、六合目手前に祀られた白川大神。四国八十八ヶ所霊場の一つ、金剛福寺にて覚明行者に御嶽山の開山を命じた神といわれます。社殿はありませんが、石碑や神像が立っています。

御嶽古道・信仰登拝ツアー

一般的な登山ツアーでは味わえない、信仰登拝ならではの内容に。登山前日、御嶽信仰の聖地である清滝で、指導者のもと滝行体験ができるのが大きな魅力。心身を清めたうえで登る御嶽山は、ひと味もふた味も違うはずです。御嶽古道を熟知したガイドの案内で歩けば、御嶽山によりどころを求めた先人たちの思いに、さらにふれられるでしょう。

1日目ツアー行程

JR木曽福島駅

↓ タクシーで移動

十二大権現

↓ 徒歩20分

新滝

↓ 徒歩10分

清滝

↓ 徒歩15分

大又三社

↓ 徒歩30分

ひめや

↓ 徒歩15分

2日目ツアー行程

↓ 徒歩5分

御嶽神社王滝口里宮

↓ タクシーで移動

御岳ロープウェイ鹿ノ瀬駅

↓ ロープウェイ15分

御岳ロープウェイ飯森高原駅

↓ 徒歩2時間50分

↓ 徒歩40分

剣ヶ峰

↓ 徒歩40分

3日目ツアー行程

二の池ヒュッテ

↓ 徒歩2時間30分

↓ 徒歩10分

御岳ロープウェイ飯森高原駅

↓ ロープウェイ15分

御岳ロープウェイ鹿ノ瀬駅

↓ タクシーで移動

二本木の湯

↓ タクシーで移動

JR木曽福島駅

ルートガイド

<1日目ツアー行程>

1日目は御嶽古道の王滝口ルートの一部をウォーキング。道中、この日のハイライトである滝行を体験しながら、4時間かけ、四合目の十二大権現から一合目のくるみ沢旅館へと下っていきます。
まず十二大権現を参拝し、東屋で木曽檜の曲げわっぱに入ったお弁当を味わったら、いよいよウォーキングスタート。山道を新滝へと向かいます。ここでは流れ落ちる滝の裏側に回り込み、見学。続いて清滝では白装束に着替え、滝行に挑戦します。
その後、木々がうっそうとした大又三社へ。今宵の宿、くるみ沢旅館へ向かう途中にある和洋菓子店「ひめや」は栗きんとんや栗きんとんパイが自慢の店。思わず立ち寄りたくなります。
くるみ沢旅館では地元野菜や山菜を使った創作風の精進料理をいただきます。郷土食「すんき漬」も登場。

<2日目ツアー行程>

2日目は御嶽神社王滝口里宮で祈祷を受けた後、御嶽山山頂をめざします。黒沢口ルートを利用し、御岳ロープウェイで一気に標高2150mの七合目へ。
登山を開始し、森林限界を抜けるとゴツゴツとした岩場が出現。九合目の石室山荘に着いたら昼食をとり、エナジーチャージ。その後の分岐で、天候がよければその足で主峰・剣ヶ峰へ向かいますが、そうでなければ、二の池ヒュッテに直行。
山小屋ではこたつでくつろぎながらゆったり過ごし、翌朝のご来光に備え、早めに就寝します。夕食は、トマトソースがかかった鶏肉のソテーが美味。

<3日目ツアー行程>

3日目は天候がよければ、ご来光を剣ヶ峰で迎えることも。下山も同じルートを利用し、昼食は二の池ヒュッテで用意されたお弁当をいただきます。
ロープウェイ乗り場にほど近い行場山荘は、「ちからもち」やぜんざいが名物で、ひと休みにぴったりです。
下山後は炭酸泉の湯で登山の疲れを癒やします。

ツアーの鍵は名ガイドの方々

輿 幸信さん

地元・木曽町出身。元・木曽おんたけ観光局職員であり、長年、御嶽古道ウォーキングのガイドを務める。御嶽信仰全般に精通し、英語での案内も堪能。

小池優紀夫さん

静岡県出身、王滝村在住。村の地域おこし協力隊員として活動後、長野県認定の登山ガイド「信州登山案内人」に。日々、登山者に御嶽山の魅力を伝えている。

御嶽古道・登拝ツアー 道中記

ブルース・ギルフォイル/アメリカ出身

日本在住は40年以上。広告会社でLLbeanなどのアウトドアブランドも手がける。現在は日本アルプスガイドセンターのインバウンドアドバイザー。在日外国人とは幅広いネットワークを持つ。

アニカ・ゴデック/ポーランド出身

日本在住は4年目。現在は東京の府中市役所でインバウンドツーリスト向けの窓口をしている。
とにかく日本人と日本文化へ強い関心と愛情を持ち、今回の信仰登山も並々ならぬ意欲を持って参加した。日本に来てからハイキング熱も芽生え、富士山には4度も登頂している。

ティファニー・ロスデイル/フィリピン出身

日本在住は25年以上。ファッショニスタとして活躍し、幅広い在日外国人ネットワークへのソーシャリストでもある。

ブルースさんのコメント

●霊神碑について

3日間を通じて霊神碑を何度も目にしましたが、その石塔は壮大な芸術作品というだけではなく、強い魂の存在感、全く異なった世界感(この世にはない)を醸し出していました。

●滝行について

滝行は本当に画期的な経験でした。滝の場所は映画のセットのようでもあり、旅館のご主人・胡桃沢公司さんの滝行に臨む指導は非常に適切で、その詠唱に異世界へ導かれていくようでした。また、修験者が100日間籠る小屋や岩屋の洞窟なども、滝行というその神々への祈りの世界観がよく伝わる場所でした。

●御嶽山登山について

御嶽山の登山は素晴らしいものでした。登山道沿いに見る、曇や霧に包まれた霊神碑はひとことで言えば、まるで映画「猿の惑星」や「Dune /砂の惑星」の世界といった、異なった惑星にいるような風景でした。シンプルに言って素晴らしい経験でした。

●友人たちにもこのツアーをすすめたい!

まず、海外の友人にもこの御嶽山の信仰登山はお勧めしたいと思います。この旅行では地元の観光協会が検討を重ね、限られた時間を有効に活用して各スポットに行くことができ、ツアーを通じて山への畏敬の念をもたらす、満足のいくツアーになるでしょう。特にアウトドアに興味を持っていたり、文化人類学に興味を持っていたり、少し変わった世界に興味を持っている人たちにはお勧めです。また、過去に日本に滞在したり、日本の文化に興味を持っていて、もう一度日本文化に触れてみたいと思っている人たちにも声をかけてみたいです。

アニカさんのコメント

●滝行について

自分にとってとても挑戦的かつ安全な、そして自分では予約することも難しいイベントで、私の家族や友人も写真を見て感動するような、日本における非常に貴重な体験でした。この経験によって「いにしえの日本」とつながり、より深い日本文化の理解へと導かれました。

●ご来光について

海外ではおもに夕焼けを見ることの方が多く、日の出は特に見ません。日本人にとって日の出を見ることがとても重要なことで、例えば初日の出を見るような習慣を親や友人へ説明するのにいい機会となりました。 天候がよく、とても幸運でした。これまでの人生で経験したことすべてに感謝する特別な瞬間でした。風が強く、頂上まで行きませんでしたが、それでも大丈夫。風を遮る場所を見つけることの方が重要で、私たちのスポットはそれにぴったりだったと思います。山小屋から10~15分のハイキングで、それほど負担もなく簡単に行けたのも良かったです。

●地元の人々とのふれあいについて

地元の人たちとの会話は私を歓迎してくれるようで、安心させてくれました。新しい場所に旅行した時は、訪れた有名な観光地だけでなく、ちょっとした出会いも印象に残ります。 古道ハイキングの途中で寄った栗菓子のお店の家族の笑顔や冗談、ちょっとしたおしゃべりなど、すべてがより受け入れられるように思われ、特別な気分になります。

●友人たちにもこのツアーをすすめたい!

まず第一に、このツアーはアクティブで、楽しく、そして日本についての知識を深める素晴らしい経験になるでしょう。 第二にこのスピリチュアルな冒険は宗教の垣根を越え、新しい考え方を私たち外国人に紹介してくれますし、一方で自分自身の信念を尊重してくれます。 私自身は日本の「信仰登山」のやり方と、自分の信じるものを組み合わせる方法を見つけることができて良かったし、途中で自分の信じる神にもっと近づくことができました。神を信じる心を取り戻したいと考える人には特にお勧めです。日本では滝行の予約や申し込みが簡単ではなく、このような体験を提供する場所が少ないので、経験豊富な地域の人たちと一緒にそれを行う、またとない機会であることを友人に伝えたいと思います。御嶽山も登りがいがあり、安全で楽しいと思います 。

●もっと伝えたい!

私の人生の中で必ず記憶に残る成功体験だったと思います。日本の山々の美しさに感動し、御嶽山での信仰登山に触発されました。来年、またツアーに参加したいと思います。滝行のために戻ってきますし、長く滞在する必要があると感じています。そして、提供された白い衣装で間違いなく登ったり下りたりします。私たちが泊まった場所のガイドやスタッフはとても親切で、今後また訪れるのが待ちきれません。皆さんが途中で素敵な写真を撮ってくれたことで、この美しい思い出をSNSで友達と共有することができました。

ティファニーさんのコメント

●滝行について

かつて同じような体験をしたことがなく、今まで興味を持ってやりたくてもできなかった貴重な体験でした。始まる前の注意事項・安全確認や定められた儀式は非常に大事なことと思われ、とてもよかったです。

●御嶽神社里宮について

私たちの登山のために行われた御嶽神社での祈祷は、私にとって非常に特別な儀式でした。登山初日は天気も悪く、少し苦労をしましたが、本当に守られているような気がしました。

●ご来光について

標高がこれだけ高い山に登ることは初めてで、山上から美しい日の出を見ることは究極の素晴らしい体験でした。

 

●友人たちにもこのツアーをすすめたい!

今回、私が経験した驚きのスピリチュアルな体験を通じて、この信仰登山を友人にも勧めたいと思います。初めて登った日本の高い山ですが、自分の中に力がみなぎることを感じました。自分が最高レベルの精神的チャレンジをしている時に、この自然とスピリチュアルな組み合わせは特別な体験をもたらしてくれるでしょう。

御嶽古道・信仰登拝ツアーのお問い合わせ・お申し込み

信仰登山に戻る