穂高連峰 / 奥穂高岳・北穂高岳 登山ルート

涸沢ルート

上高地~横尾~涸沢~奥穂高岳~前穂高岳~奥穂高岳~涸沢~横尾~上高地

技術レベル: C
体力レベル: 8
難易度: ★★★★

初めて奥穂高岳に登る人におすすめのコース。
ザイテングラートと穂高岳山荘からの登り、下りに注意が必要です。
※ヘルメットは必ず着用して下さい。

上高地へのアクセス

●登山データ

日程: 2泊3日
歩行時間: 21時間50分
(登り: 11時間50分、下り: 10時間)
歩行距離: 38.7 km
登り累積標高差: 2,894 m

:山荘情報
上高地

標高 1,505m

↓ 2時間

徳沢

標高 1,562m

↓ 1時間10分

横尾

標高 1,620m

↓ 3時間

涸沢

標高 2,309m

↓ 2時間50分

穂高岳山荘

標高 2,983m

↓ 50分

奥穂高岳

標高 3,190m

↓ 2時間

前穂高岳

標高 3,090m

↓ 2時間10分

奥穂高岳

標高 3,190m

↓ 2時間40分

涸沢

標高 2,309m

↓ 5時間10分

上高地

標高 1,505m

涸沢ルート詳細ガイド

ルートガイド

ここでは涸沢~奥穂高岳~前穂高岳~奥穂高岳~涸沢のコースを紹介します。北穂高は「北穂高岳涸沢ルート」を参照してください。

北アルプスを目指す人なら必ず訪れる涸沢。ここをベースにして北穂高岳や奥穂高岳、前穂高岳に登ってみましょう。初級者でも上級者が同行していれば歩くことができます。しかし、そこは日本の屋根ともいわれる3,000mの稜線です。ほんの少しの油断で自然が牙をむくことがあるので、天候や体調、気力に応じた対処の仕方を考えることが大切です。このエリアに通い慣れた経験者でも天候の悪い時には登山を断念します。自分の気力、体力、装備が完璧な時に挑戦しましょう。

上高地バスターミナルから歩き始める前に必ず登山届を提出しましょう。河童橋で穂高の眺めを堪能したら小梨平を経由して梓川を遡ります。50分ほど歩くと砂礫地にでます。左上に聳えている岩山が明神岳です。すぐに明神に到着します。明神館の前にベンチが置かれているので、そこが最初の休憩ポイントになります。時間があれば明神池に行ってみるのもいいかもしれません。汗が引いたら徳沢に向かいます。明神から先を歩く人はほぼ登山者です。途中で徳本峠に向かう登山道を右に分けます。1時間ほどで徳沢です。元々牧場だった広場(テントサイト)を挟んで2軒の小屋が建っています。ひと息入れて、水を補給したら出発しましょう。

樹林帯から梓川沿いの遊歩道を進みます。左に立派な吊橋が見えてきます。往年の名クライマー、新村正一の名から新村橋と名付けられています。この橋を渡ると初・中級者では難しいパノラマコースを辿り涸沢に向かうことができます。一般登山者は道なりに進みます。徳沢から1時間10分ほどで横尾に到着します。涸沢に向かう横尾大橋前に建つ横尾山荘は多くの登山客で混雑しています。ここで槍ヶ岳方面へ向かう登山者と別れて横尾大橋を渡ります。岩小屋跡を過ぎると左に巨大な屏風岩が見えてきます。新村橋を渡るとこの大岩の上部を歩くことになります。樹林帯を登るようになれば本谷橋に着きます。河原は絶好の休憩ポイントですが、沢水は飲料不可。

本谷橋から階段状の道を登ります。それまでとは異なり勾配の強い道になります。一歩一歩ゆっくり丁寧に登りましょう。樹林帯から岩が堆積した箇所を抜けると、少しずつ上空が開けてきます。疲れたら立ち休みを繰り返して頑張りましょう。斜面から大小の岩が押し出されたSガレの押出しを過ぎ、しばらく頑張ると小屋が見えてきます。そこが涸沢ヒュッテで、分岐を右へ向かえばすぐに涸沢のテントサイトに到着します。初めて訪れた人は涸沢カールと穂高連峰の山並みの美しさに感動するはずです。ここには涸沢ヒュッテと涸沢小屋が建ち、テントサイト受付場の隣りは山岳救助隊が常駐する登山補導所があります。その補導所の前にはシーズン中、毎朝天気予報が張り出されるので参考にしましょう。小屋泊まり、テント泊まりどちらにしても今夜は早々に休みましょう。テント泊の人の中には朝食と夕食を小屋で食べる人も少なくありません。料金はかかりますが、持っていく食材は少なくなります。テント泊の人は就寝まで寝袋の中から、満天の星空を眺めましょう。

翌日はモルゲンロート(夜が明けきらない早朝に東の空から赤い光線が山肌を照らし、一時赤く染まる朝焼け)を堪能しましょう。朝食を済ませたら前穂高岳をピストンします。今夜も涸沢に宿泊する設定なので、その日に必要でない物はグループでまとめて小屋に預けておきましょう。また、テント泊の人はテント内に自分の名前と行先、おおよその下山予定時刻をメモした紙を残しておきましょう。また、ソロで訪れた人は定期的に家族や山仲間に連絡を入れるようにしましょう。万一の場合、最後の電話連絡の時刻から事故に遭遇した場所が推測できるからです。ソロでのテント泊の場合はここに限らず、必ず守っておきたいことです。

涸沢から白出のコルを目指します。涸沢ヒュッテ、テントサイトからスタートする場合は道標に従って進みます。この道は涸沢小屋から白出のコル方面に向かう登山道に合流します。開けた斜面に延びる道を進みます。勾配はありますが、ゆっくり登ればペースが掴めるはずです。また、午前中は日差しが強いのでこまめな水分補給を忘れないこと。前方に大きな岩が見えてきたら、そこがザイテングラートの取付き点です。ザイテングラートとは主尾根に対する支尾根という意味の言葉です。ここでは北穂高岳から奥穂高岳に向かう尾根に突き上げる尾根のことを指しています。

大きな岩を回り込むようにしてザイテングラートに取付きます。岩の上を登る箇所が連続するので、転倒には要注意です。穂高岳山荘が建つ白出のコルまで平坦地はありません。高度が上がると涸沢が遥か下方に見えてきます。邪魔にならない箇所で小休止を繰り返しながら登りましょう。

穂高岳山荘前のテラスまで登ると眼下にはカラフルなテントの花が咲く涸沢が見えています。北穂高岳山頂も見えています。ひと休みしたら、小屋の脇から大きな岩場に取付きます。すぐに2連のクサリとそれに続く2連の短いハシゴを登ります。さらにその上部で長いクサリ場をクリアすると岩稜線を歩くようになります。右に見える特徴的な頂を持つ山が登山者憧れのジャンダルム(フランス語で傭兵の意)です。いつかは挑戦したい山ですが上級者向きなので、ほとんどの人はガイドツアーに参加しています。西穂高岳への道標を見送ればすぐに奥穂高岳に到着。小さな祠が祀られた山頂で標高は3,190m。国内では富士山、北岳に次いで3番目に高い山です。

奥穂高岳から吊尾根に入り、前穂高岳をピストンします。天から吊り下げられたような道。という意味合いを込めて「吊尾根」と命名されたようです。南稜ノ頭から30mほどのクサリ場を急降下します。高度感があるので、ゆっくりと三点支持で下りましょう(復路で登る場合も同様)。その後は岩場を着実にこなしながら下ります。右側が切れ落ちた尾根道です。急がず、着実に歩きましょう。最低コルまで下ったら、登り返して紀美子平に行きます。小広い紀美子平は岳沢小屋に下る重太郎新道の起点になる場所です。ここにバックパックをデポして斜面の岩場を登ります。辿り着いた頂が標高3,090mの前穂高岳です。山頂は広く岩が堆積していますが、展望は申し分ありません。時間の許す限り展望を楽しみましょう。

下山は往路を戻りましょう。紀美子平から重太郎新道を利用して岳沢に下ることはできますが、勾配が強く滑落死亡事故が多いので初級・中級程度の人は下らない方が無難です。ただし、この重太郎新道を登りに使うなら、体力は必要ですが引率者が上級者なら登ることはできるはずです。