【CONTENTS】ライチョウってどんな動物なんだろう?

【 ライチョウ豆知識 】

①人を恐れない?

海外のライチョウは狩猟対象であるため人を見ると一目散に逃げ出します。人を恐れない日本のライチョウは、彼らの棲み家である高山を神聖な場所としてきた日本文化が反映された貴重な鳥です。

②世界で一番南?

ライチョウが大陸から渡ってきたのは氷河期です。その頃は海水面が低く、大陸とはほぼ陸続きでした。その頃、現在の中部山岳地帯は氷河に覆われていました。氷河が解け始めて大陸に戻れなくなったライチョウたちはこのエリアに取り残されました。彼らが日本のライチョウの先祖になります。時代的には旧石器時代。日本のライチョウは世界中のライチョウ(Lagopus muta)で一番南に生息しています。

③ライチョウは飛べる?飛べない?

ライチョウは普段は歩いて移動しますが、飛ぶこともできます。最長では30㎞以上に渡り移動することもあると考えられており、絶滅地域の白山及び中央アルプスでそれぞれ2010年、2018年に数十㎞離れた北アルプスから雌1羽が飛来しました。

④ライチョウは雷の鳥?

捕食者から身を守るため天気の悪い日によく出てくるのが名前の由来という説もあります。でも英語名はThunder Bird(サンダー・バード)ではなくRock Ptarmigan(ロック・ターミガン)です。

⑤ライチョウの羽は生え換わる?

ライチョウの羽は年に3回生え換わります。冬は雌雄ともに真っ白、春は雄が黒、雌が茶色のまだら模様になります。また、秋になると雌雄ともに灰色に変化します。ただし、お腹と翼の色は一年中変わらず白いままです。

⑥ライチョウは冬に山を下りる?

雪で覆われる高山帯では餌が採れないため、ライチョウは冬の間は森林限界付近まで山を下ります。ダケカンバやミヤマハンノキの芽などを主食に集団で過ごします。

⑦ライチョウは雪に潜る?

吹雪に耐えるため、ライチョウは雪に潜って寒さをしのぎます。潜った跡を見るとフンがたくさん落ちていて、その量で滞在時間がわかります。

⑧ライチョウは足の先まで毛が生えている?

過酷な環境で暮らすライチョウは生まれた時から足が太く、指の先まで毛が生えています。ヒナは1日もすれば巣から出て親と一緒に移動し始め、2度と自分が産まれた巣に戻ることはありません。

⑨ライチョウのヒナはフンを食べる?

特殊な環境で生育する高山植物はそのままだと体に毒になってしまうものもあります。ライチョウはこれを消化するために、長い盲腸と特殊な腸内細菌を持っています。この腸内細菌は生まれてすぐに母親のフンを食べて得ていることが最近わかりました。

⑩ハイマツがないと棲めない?

捕食者からの隠れ家と最適な営巣環境を提供してくれるハイマツ。餌としては雄花を少し食べる程度。ハイマツがなければ棲めないわけではありませんが、低いハイマツがバッチ状に広がる植生が理想。

【 ライチョウの危機 】

①温暖化

高山帯という、いわば雲上の『島』に取り残されたライチョウは、温暖化により生息地を失ってしまう可能性が非常に高い生き物です。

②捕食者

キツネやテンなどの元々里山で生活していた動物が高山帯に侵入し、ライチョウを捕食しています。

③植生への影響

里山で増えたニホンジカやイノシシが高山帯に侵入し、高山植物が食べ尽くされてしまうおそれがあります。

ライチョウに魅せられた本誌執筆者のひとり、雷鳥写真家の高橋広平氏。距離を保って撮影に挑みます。

ライチョウは北アルプスではアイドル的な存在です。立山では擬人化されたイラストが立山室堂の説明看板に描かれています。

常念岳山域で見かけたライチョウ。5mほどの距離を保っていましたが、怖がる様子もなく餌を探していました。