PROLOGUEルールブック作成にあたって
人を恐れない日本のライチョウ。神が宿る奥山に棲み、神の鳥として崇められ、狩猟されなかったゆえの性格です。人が立ち入らない原生的な自然に体現される日本文化。この鳥が今、絶滅の危機に瀕しています。
日本アルプスの高山帯に広がるお花畑のような手つかずの自然は、壮大な山岳風景や草木のひとつひとつにまで「神が宿る」として大切にされてきました。しかし、現在では高山帯に侵出してきたテンやニホンジカなど里山の動物が、ライチョウを追い詰めています。さらに気候変動による植生変化も明らかになってきています。いずれも私たち人間の活動がきっかけです。
しかし、山に登る方々が少しのことを理解するだけでライチョウを守ることができるのです。相手を思いやり自分を律することができる私たちには、ほんの少しのことば(ルール)があればいいはずです。言葉にせずとも感じることができる暗黙の了解(マナー)を皆さんと共有するために、おさえるべき最低限のことをことばにします。
ふと目の前に現れたライチョウと、自然への畏敬の念で紡がれてきた先人たちの素敵な物語。このルールブックがその扉を開くきっかけとなればと思います。さらに、一人ひとりがライチョウの保全を担うきっかけになればと思うのです。
(環境省)