【CONTENTS】日本アルプスの誕生
日本アルプスは本州の中央部に位置する三列の山脈、北アルプス、中央アルプス、南アルプスから構成されています。いずれも森林限界をこえる3000m級の山頂が南北に連なる山脈で、全長は100km前後です。2万年前と6万年前の氷期には山岳氷河が高所に発達しましたが、氷食作用は限定的なために主稜線の起伏は小さく、主稜線に沿った登山道が発達しました。
日本アルプスの形成時期は、世界の山脈の中でも最も新しいグループに属し、三つの山脈はいずれも第四紀の250万年前以降に、日本列島に沈み込む海洋プレートによる東西圧縮力の作用で誕生しました。250万年前以前は、いずれの地も標高1000m未満の丘陵だったようです。
北アルプス槍穂高連峰での山脈形成
槍穂高連峰では、175万年前に巨大なカルデラ火山が活動していました。この時地下数kmまで上昇したマグマにより地殻の強度が低下し、地殻中部のデタッチメント断層に続く逆断層が発生しました。逆断層に沿って上盤側(槍穂高連峰)が衝上運動を起こすことで傾動隆起が起こりました。数十万年間に及ぶ侵食で硬いカルデラ火山岩が高まりとして残り、さらに6万年前と2万年前に生じた山岳氷河により鋭い岩稜の連なる山並みが完成しました。
水晶岳から見た北アルプス。どこまでも山脈が続く美しい景色が見られる。山脈稜線の高さが揃っているのは、山脈の下にある地殻の受ける浮力がほぼ同じで、また山岳氷河の侵食作用が小さかったことを反映している。
北アルプスの地質と隆起運動
北アルプスは北部の古生代付加体、中部の後期白亜紀花崗岩と火山岩、南部のジュラ紀付加体に大きく区分され、第四紀のカルデラ火山-花崗岩複合体と活火山を含む乗鞍火山列を伴います。山脈形成は230万年前の緩やかな広域隆起に始まり、140 ~80万年前にかけては山脈東半部で東への傾動を伴う激しい隆起が生じ〈図1〉、それに続いて山脈西側での西へ傾動する隆起が起こりました。
南アルプス山脈西側の水準点観測では、4㎜/年の平均隆起速度が観測されている。山脈の中軸部ではさらに大きく隆起している可能性もある。
中央アルプスと南アルプスの地質と隆起運動
中央アルプスは後期白亜紀花崗岩類から構成されます。中央アルプスの隆起は約80万年前に始まります。山脈の東西縁には山脈に沿って南北に伸びる活断層が複数並走しています。これらの断層は山脈中軸に向かって傾斜する逆断層で、山脈中軸部ほど上昇変位が大きいことで山脈を成長させてきました。 南アルプスは主にジュラ紀と白亜紀~古第三紀の付加体で構成されます。付加体は北部では南北に、南部では北東―南西方向に配列しますが、これはフィリピン海プレートの北進時に形成された屈曲構造です。南アルプスの隆起は約140万年前に始まり、山脈の東縁を走る西傾斜で低角の大規模逆断層により、西に傾動しながら隆起してきました。この隆起は現在も続いています。