日本アルプスいきものたちの観察準備

さぁ、日本アルプスへ貴重な野生動物達の足跡を追い、運が良ければ観察してしまいましょう。もちろん山は動物たちの棲家。こちらは来訪者ですので、節度を持って彼らを訪ねてみましょう。そうすれば、きっと彼らも応えてくれると思います。

動物観察に必要な装備ーどんな装備が良いのでしょうか?

基本的には山登りの服装ですが、高山に行くことも考えた防寒対策も必要でしょう。夏だからといって半袖にはならず藪こぎすることも考えて、長袖、長ズボン、また歩きやすい登山靴、場所によっては長靴が必要です。ヤブには棘のある植物や、ウルシのような有害植物も生えています。長靴であればもしマムシを踏んでも噛まれない可能性が多いはずです。また長袖はスズメバチの攻撃からの防御にもなります。日よけの帽子は夏場の観察には必帶です。

1. フィールドノート

どのようなことでもフィールドノートに記録しておきましょう。あとでかならず役に立つでしょう。小型で胸のポケットに入るくらいのノートが便利です。

2. 地図

スマートフォンに入っている地図も便利ですが、電波が通じないと使えません。どのような地図でも構いませんから、持参しましょう。情報センターなどにおいてある地図ももらっておきましょう。

3.コンパス

スマートフォンに入っているコンパスは高度計も兼ねていて便利ですが、やはり電波がないと使えません。100均でもコンパスは売っていますから、ザックに入れておきましょう。

4.熊よけスプレー、鈴、ラジオ

ツキノワグマに人間の存在を知らせる為の鈴やラジオをつけることによって突然の出会い事故を防ぐ事が可能です。熊よけスプレーは小型の護身用のものが小型で便利でしょう。

5.蚊取り線香、虫よけ

夜間じっと動物が出るのを待っているときにこれらの薬剤は役に立ちますが、逆に人間が居ることを知らせることにもなるので、程々の利用が良いと思われます。

6.ビニール袋

軽くてじゃまになりませんから何種類か持参すれば、役に立つと思われます。

7.双眼鏡

大型のものは明るくて便利ですが、行動の妨げにもなります。15倍程度の折り畳める、ポケットに入るような双眼鏡でも十分役に立ちます。

8.ヘッドライト

夜行性動物の観察には必要になります。最近ではLEDタイプの小型ライトも出ていますから、前に赤いセロファンをつければ、より警戒されないで観察が可能になります。

9.緊急対応薬品

簡単なものでも良いですから、消毒液や傷バン、坑ヒスタミン軟膏、とげ抜き(ダニ取り)などをザックの中に入れておきましょう。

12.スケール

動物の足跡や歩幅の計測には必要です。ノギスがあればより正確に測定できます。

11.軍手

岩場や藪こぎをするときには必要です。また糞を扱うときには軍手を使い、ビニール袋でつかみ取りましょう。もちろん最後に手を洗うことを忘れずに。

季節ー観察時期はいつが良いの?

どのような季節でも動物たちの観察は可能ですが、夏場になるとどうしても葉が茂り彼らの姿を見にくくなるでしょう。逆に春先の芽吹き前や、落葉後の森林は動物たちが見えやすい季節です。

更に新雪が降ったあとは足跡などの痕跡も残るし、観察には適した季節だと言えるでしょう。逆に雨の雨季は、登山自体も低調になるし、動物の動きも鈍くなりがちです。

秋口の繁殖期前の鳴き交わしの行動や、春先の出産後の授乳中親子などは、縄張りに定着し行動範囲もそれほど広くなくじっくり観察できる季節かもしれません。

どこへ行けば沢山逢えるでしょうか?

動物たちと出会いたいと想っても、そうどこでも姿を現せて簡単に出会えないのが植物とは違う動物です。まずは登山基地の宿の主人の話を聞いてみましょう。また登山基地には自然情報センターなどが設置されています。そこのレインジャーや情報ノートは動物たちの貴重な情報源です。また各地の情報センターで行われる体験コースでも動物たちに出会えるかもしれません。

現地での観察の仕方 – フィールドサインって何?

獣道

けもの道

動物たちがよく使う道が獣道です。人間が通らないような場所で、踏み跡がついていたら何かの動物が使っているかもしれません。そのような場所にトレイルカメラを設置してみると、案外身近な場所を動物たちが使っていることがわかるでしょう。

皮剥

ツキノワグマの爪痕

ツキノワグマは自分の縄張りを誇示したり、皮を剥いだあとの樹液をなめるために皮剥を行います。林業家にとっては木が枯れてしまうのでいい迷惑ですが、ツキノワグマが生息するいい目印になります。

熊棚

クマだな

ブナなどの樹の枝が途中から折れていたら、熊棚の可能性があります。ツキノワグマの餌はそれらの葉やドングリですが、それを採るために枝を折って棚のようになった状態が熊棚です。かなり大きいので山では割と目に付きます。

足跡

ニホンリスの足跡/キツネの足跡

なんと言ってもそこの住む動物の痕跡として残る足跡は、動物探しの重要なキーポイントです。動物によって全て違いますから、刑事さんよろしく動物探しの鑑識作業を是非行ってみてください。

シカの糞/ノウサギの糞

足跡と同じく糞を調べることによって動物たちが何を食べているか知ることが可能です。ここで役に立つのがビニール袋です。軍手を使って採取した糞を帰ってアルコールで溶解してみると、糞の中に植物やネズミなどの歯が入っていることがわかるでしょう。

動物観察注意事項

あくまでフィールドでの主役は動物たちであって、皆さんではありません。生息場所に立ち入らせてもらっているという認識のもとで観察させてもらってください。あなたが自然と一体になって、動物たちの邪魔者でなくなった時、彼らは思いも寄らない行動を見せてくれるかもしれません。そんなときに双眼鏡から飛び込んでくる生態はあなたの心にしっかりと残るはずです。

  • 幸運にも彼らに遭っても、絶対にエサは与えないでください。
    動物は野生で生きていく必要があります。
    彼らのためにも絶対にエサを与えないこと。
  • 幸運にも彼らに遭っても、近づき過ぎないようにしましょう。
    野生動物たちが向こうから近づいてくることは基本的にはありません。
    クマも人間に遭ったら逃げていくことが多いですが、
    襲ってくる可能性が無いとは言えません。
    あくまで距離を保って、彼らの生活を犯すことのないようにしましょう。
  • 自分の居所をしっかり把握して移動しましょう。
    登山道から外れたり、観察のために山に分け入っても、無理をせず危険な場所への立ち入りはやめましょう。
    また読図できる範囲での移動を心掛けましょう。