日本アルプスの野生動物たち 哺乳類篇

本州中央部に連なる日本アルプスでは、本州で見られるほとんどの陸生哺乳類が生息していると言っても過言ではないでしょう。
また特に高山性の特異な小哺乳類であるトガリネズミなどの小哺乳類もこれらの連山には生息しています。

これらの動物たちは、どちらかと言うと日本アルプスのふもとから亜高山にかけてが主な生息地で、夏になると低地から高地に移動する種類もいるし、ホンドオコジョのように冬になっても高地にとどまって暮らしている、氷河時代の生き残りのような種類もいます。

これらの動物たちは北海道では割と低山でも見られますが、本州では日本アルプス地方だけに見られる動物たちです。
野生動物たちはやはり餌にかなり支配されて、暮らしていますから、えさの豊富な地域というのが、それぞれの動物たちに出会えるチャンスも多いということになります。

いずれにしても日本アルプスに登山するには、麓からの登山になりますから、それらの地域での観察も、動物たちに出会うには大切になるでしょう。

ニホン カモシカ
日本固有種 特別天然記念物

かつては高山に住む代表的な動物でしたが現在では生息数の拡大から麓でも観察されるようになってきました。植物食で親子以外は単独で、自分の縄張りを持って暮らしています。別名カモシカのことをアオと呼ぶ地方もあり、岩山で何時間も寒立ちする姿を見ることもあるでしょう。シカとカモシカの見分け方は、シカの体色は褐色系ですが、カモシカは白色系から黒色系までかなりバリエーションがあります。シカの糞はパラパラと歩きながらすること多く散らばっていますが、カモシカは反芻する場所でため糞を見ることが多いようです。

ニホン カモシカ 観察エリア

ホンド オコジョ
準絶滅危惧種

標高1200実上の亜高山から高山に生息するイタチの仲間の動物です。顔は可愛いですが、肉食性ですから非常に獰猛でノウサギをも捕食するといわれています。非常に好奇心旺盛で、登山中に岩場で出会うことも多いでしょう。秋口から体毛は茶褐色から純白に換毛します。尾の先は黒色でここは換毛しません。餌は岩場のネズミ類で、その餌を探すために体は細長く、狭い岩の間も通り抜けられるように進化しました。非常に俊敏に行動しますが、登山者の足元から顔を出すこともあります。

二ホン リス
日本固有種

二ホンリスは体長22㎝位、手のひらに乗るような大きさです。平地から亜高山帯にまで生息していますが、警戒心は強く登山者が見つけても逃げてしまうことが多いと思います。主にクルミなどのを食べる植物食ですが、案外ゲテモノ食いで野鳥の卵やキノコ、松の実、昆虫なども食べる雑食性に近い食性です。冬になると換毛し体毛も白色が混ざるようになります。10haのテリトリーを持ち、雌同士のテリトリーは重複しません。年2回繁殖し樹上に枝で作った球状の巣をいくつか作りそこで休みます。

ニホン リス 観察エリア

ニホン ザル
日本固有種

北アルプスの山麓には40群2000頭あまりのニホンザルが生息しています。群で行動し夏には標高3000mまで登る群もいます。しかし最近ではライチョウを食べるサルも確認され、また麓では畑を荒らし害獣扱いの場所が多くなってきました。雑食性で木の実や植物の葉などを採餌し、1-80km2のテリトリー内で行動します。順位制を保ちリーダーオスを中心とした母系集団を形成し、若いオスは放浪の旅に出る個体も確認されています。サルの仲間では最も北に生息することか、スノーモンキーとも呼ばれています。

ニホン ザル 観察エリア

ホンド タヌキ

里の獣と漢字で書くように麓に住む代表的な動物ですが、標高2000mの亜高山地帯まで生息しています。雑食性で柴犬よりも小型でどちらかというともこもこしています。夜行性なのであまり昼間観察するチャンスは多くはないと思います。冬眠はしませんから冬でも見られるチャンスはあると思います。驚くと気絶して俗にいう狸寝入り状態に陥り、そのうちまた歩き出して逃げることもあります。このような行動から、昔の人はタヌキに化かされたと言わしめたのかもしれません。

ツキノワグマ

本州最大の動物で、オスでは体重120㎏にもなります。基本的には人間を恐れていますから登山んで出会っても、まずはクマの方が人間を避けますから絶えず人間がいることを知らせる鈴や、ラジオなどを鳴らしておくことも突然の出会いを防ぐ一つの方法です。基本的には植物食。出会っても死んだふりをしても無駄で、なるべく後ずさりして慌てず後退するのが防御法です。

ニホン ジカ
日本固有種

アルプス連山の森林の中で昼間は隠れて暮らし、夜間草原地帯に出てくることが多いようです。南アルプでは6月の声を聴くとシカの高山への移動が始まります。目的は高山植物の採餌で、かなりの食害が発生しています。北アルプスにおいてもこの傾向がみられることから、なんとしてもその侵入は防がなければなりません。秋になるとシカの恋の季節が始まり、フィート言うラッティングコールが野山で聞かれるかもしれません。メスは産まれた子供と母系集団を形成します。

ニホン アナグマ
日本固有種

タヌキと混同されやすい動物ですが、古来ムジナと呼ばれていたのがアナグマで、イタチの仲間です。非常に力強い爪で穴掘りが得意で,地中のミミズなどもその爪で掘り起こし採餌します。11月になると地方によっては冬眠してしまいますが、そのころのアナグマは丸々と脂肪を貯めこみ、タヌキ汁とは実はアナグマのことだと村の猟師は話します。

二ホン ノウサギ
日本固有種

冬になると雪の上に点々んと足跡が残りその存在を確認することができますが、実際その姿を見ることは多くは有りません。それはほとんどその行動は夜間で、しかも捕食者に狙われて居るために、絶えず逃げまどっているというのが現実です。しかし昼間が藪などでじっとしているため、登山者がかなり近づかないと動かないので足元から飛び出し、びっくりさせられます。冬になると地域によっては茶褐色から白色に換毛します。亜高山帯まで数多く生息しますが、捕食者から狙われていますから警戒心は強いです。

ヤマネ
日本固有種

ネズミに似ていますがヤマネ科に属する1属1種です。眼は大きく背中に黒い筋のある体毛が特徴的です。キネズミとも呼ばれ雪の中で丸くなって冬眠している姿を観察できることもあります。また山小屋の布団部屋などで冬眠することもあります。動きは非常に敏捷的で木の枝に逆さまになって移動することも可能です。低山帯から亜高山帯にまで生息し、主に夜行性ですあら見かけることは少ないかもしれません。八ヶ岳の山小屋では住み着いて、登山者の人気者です。

ホンド テン
日本固有種

イタチの中で一年中活動し冬眠はしません。冬季に体毛は山吹色に換毛することからかつては狩猟獣でしたが、現在本州では絶滅危惧種にしていされています。夏になると褐色系の体毛に換毛します。肉食性が強い動物ですが、果実の実もよく採餌します。そのために爪は頑丈で木登りは得意です。単独で行動していますが昼間でも行動し観察できることも多いです。顔は可愛いですがイタチの仲間ですから非常に獰猛です。

ホンド キツネ
日本固有種

肉食性の強い中型の動物で、冬季でも行動し冬眠はしません。アナグマが掘った穴を使うこともありますが、自分でも巣穴を作り子育てをします。いくつもの穴が掘られていたらそれはキツネの巣穴かもしれません。子育て時は昼間で行動しますが、主に夜行性でタヌキに比べ非常に警戒心は強いです。雪の上に残った足跡は1本足のように見えたら、それはキツネが通った痕跡です。

(動物たちの紹介文  フォトグラファー  飯島 正広)