槍ヶ岳 登山ルート

表銀座縦走ルート

中房温泉~燕岳~大天井ヒュッテ~西岳~水俣乗越~ヒュッテ大槍~槍ヶ岳~横尾~上高地

技術レベル: C
体力レベル: 9
難易度: ★★★★

北アルプスで最も憧れる表銀座縦走路を歩く
スタート地点の燕岳から終点の槍ヶ岳までのコースを目視してから出発。
※核心部は必ずヘルメットを着用してください。

中房温泉へのアクセス
上高地へのアクセス

●登山データ

日程: 3泊4日
歩行時間: 24時間50分
(大天井ヒュッテまで:9時間 大天井ヒュッテ~ヒュッテ大槍まで:6時間 ヒュッテ大槍~上高地まで:9時間50分)
歩行距離: 36.2 km
登り累積標高差: 3,289 m

:山荘情報
中房温泉

標高 1,450m

↓ 2時間50分

合戦小屋

↓ 1時間30分

↓ 30分

燕岳

標高 2,763m

↓ 30分

燕山荘

↓ 1時間

大下りノ頭

↓ 2時間分

喜作レリーフ

↓ 50分

↓ 50分

大天井ヒュッテ

標高 2,760m

↓ 2時間50分

西岳

標高 2,758m

↓ 1時間

水俣乗越

標高 2,480m

↓ 2時間10分

ヒュッテ大槍

標高 2,884m

↓ 50分

↓ 時間分

槍ヶ岳

標高 3,179m

↓ 8時間30分

上高地

標高 1,505m

ルートガイド

■日本屈指のアルペンルート、しっかり計画を立てましょう。

 中房温泉から大天井岳を経由して槍ヶ岳に向かうルートを表銀座
縦走路といい、高瀬ダムから始まる縦走路を裏銀座縦走路といいま
す。どちらも人気の縦走路ですが、ここでは表銀座縦走路をガイド
します。計画を立てる時には、安全第一で余裕のある計画を立てま
しょう。

●1日目 急登 合戦尾根を登り稜線へ(燕岳含む 5時間20分〜)
 スタート地点となる燕岳までは中房温泉からアプローチします。
合戦尾根という勾配の強い道を登りますが「疲れた」と思う頃に休
憩スペースが現れるので、それほど無理をしなくても山頂に立てる
はずです。また、途中の合戦小屋で頂く冷えたスイカは名物になっ
ています。燕岳は白い花崗岩に覆われていますが、展望が良く、終
点の槍ヶ岳が見えています。燕岳では本物そっくりな「イルカ岩」
はチェックしておきましょう。シーズン中ならコマクサが出迎えて
くれるはずです。今夜は燕山荘に宿泊します。

●2日目 表銀座縦走コースから大天井岳へ(4時間30分〜)

 翌日はできるだけ早く燕山荘をスタートします。稜線を南に歩き
始めます。しばらくは起伏の少ない花崗岩の道です。右に裏銀座コ
ース、左下には広大な安曇野平野が広がっています。蛙岩と命名さ
れた巨岩が並ぶエリアを抜け稜線上をトレースして行くと大下りノ
頭に到着。標高は2,678m。立ち休みをしたら、ここから一気に下る
ことになります。せっかく高度を稼いてきたのに残念ですが、これ
が登山の醍醐味でもあります。ダケカンバとお花畑が広がる場所で
す。すぐに為右衛門吊岩の大きな岩を絡みながら下ります。ひと通
り下ったら、今度は登り返すことになります。かなりきつい傾斜で
すが、頑張るしかありません。沿道に咲くウサギギクやキンポウゲ
などの可憐な高山植物に励まされながらクリアします。登り返した
地点から花崗岩に覆われた尾根道を進むと切通岩に出合います。こ
こからハシゴとクサリを頼りにして大天井岳の基部に下ります。大
天井岳側の岩壁には、西岳、東鎌尾根に繋がる喜作新道を造った小
林喜作のレリーフがはめ込まれています。小林を始め日本アルプス
には偉業を成し遂げた人がたくさんいます。中でも登山道を開きさ
らに山小屋を建てた人が多く、その偉業は現在でも称えられていま
す。我々登山者が安全に日本アルプス山域に入ることができるのは、
こうした先人たちの努力と情熱があったから。ということを忘れな
いようにしましょう。
 砕石を踏むようにしながらひと登りすると道が分岐します。右が
槍ヶ岳、左が大天井岳の肩を経由して大天荘、常念岳方面への道に
なります。右下に見えている小屋が大天井ヒュッテです。ジグザグ
の道を下ればすぐにヒュッテに到着します。

●3日目 迫力のある北鎌尾根を眺めながら進む(6時間50分〜)

 大天井ヒュッテからダケカンバが広がる斜面を登ります。尾根道
に乘ると槍ヶ岳が大きく見えてきます。その凛々しい立ち姿に一瞬
足が止まってしまうかもしれません。
 小さくアップダウンを繰り返して進み、赤岩岳の登りにかかりま
す。山頂には三角点がありますが気づかない人も多いようです。山
頂からの展望はもちろんいいので、展望を楽しんだら三角点を探し
てみましょう。
 赤岩岳からは細い道をアップダウンしながら進みます。進行方向
に小屋が見えてきたら、そこがヒュッテ西岳です。槍ヶ岳は当然と
して、穂高連峰や常念岳などが展望できます。もちろん常念岳から
眺めても、ヒュッテ西岳やそこを目指す登山者の姿を確認すること
ができます。コンパクトな双眼鏡を持っていれば楽しさは広がるか
もしれません。時間があれば西岳山頂をピストンしましょう。
 ヒュッテ西岳からほぼ直角に曲がって西へ。すぐにハシゴやクサ
リを使って水俣乗越に急降下します。足元に要注意ポイントです。
焦らずに自分のペースを守ってクリアしましょう。水俣乗越には槍
沢から槍ヶ岳に向かう大曲へ下るエスケープルートがあるが、かな
りの急勾配なので注意が必要。
 水俣乗越から東鎌尾根に入ります。ここから槍の肩までは4時間
弱。焦らずにクリアすることだけを考えて行動しましょう。ザレ気
味の斜面を焦らずに登ります。当然滑りやすい箇所なので、バラン
スを崩さないように気持ちを集中させて進むことが大切。上部で三
連のハシゴを登ることになります。下から18段、14段、18段と続き
ます。滑落防止用のワイヤーが張られていますが、このハシゴを下
って来る人がいないことを確認してから登ること。途中で下ってく
る人とすれ違う場所はないので、取り付く時には上部を確認しまし
ょう。また、3連のハシゴのひとつに取り付くのはひとり。複数人
が同時に1連のハシゴに取り付くのは危険なので、必ず「1連にひ
とり」ということを守りましょう。
 この悪場を越えるとハイマツに覆われた岩稜線を登るようになり
ます。頭上に槍の穂先が見えてきたら、ヒュッテ大槍に到着。さら
に岩稜線を進むと殺生ヒュッテに下る道が左に分岐しますが、まっ
すぐに進んで槍ヶ岳の基部をトラバース気味に斜上します。槍沢か
ら登ってくる道と合流すれば、槍ヶ岳の肩まではあとひと息。

●槍ヶ岳山荘で状況を確認して山頂へアタック(30分〜)

 槍ヶ岳山荘に到着したら、ここにチェックインして山頂まで登れ
る状況ならアタックしてみましょう。また、翌日は夜明けに再び山
頂に登り日の出を堪能することをおすすめします。が、ここの標高
は3,000m。体調が悪ければ無理しないようにしましょう。
 槍ヶ岳山荘からわずかに進むと槍の穂先の底部に出ます。ここか
ら岩に付けられた誘導の印に従って岩場に取り付きます。基本的に
はクサリやハシゴが連続しますが、落ち着いて行動すれば問題はあ
りません。小学生でも登ることができるように整備されています。
ただ、ルートは上りと下りに分かれているので先行する人の行動を
見て進めば大丈夫です。
 まず、左側の岩の取り付きほぼ直上。その後は岩に付けられたペ
ンキマークに従います。基本的に上りと下りのルートは分かれてい
るので、間違わないように注意しましょう。前方に→や〇が見えて
いれば正しいコース取りをしていることになります。また、クサリ
が張られていない箇所もあるので、三点支持(確保)の姿勢を保ちな
がら進みます。
 山頂までの中間点付近にハシゴ登りがあります。それが終わると
クサリを頼りの登りになります。できるだけ下を見ないで進んだ方
が高所が苦手な人にはいいかもしれません。最後に山頂まで架けら
れたハシゴを登れば槍ヶ岳の山頂に到着します。
 山頂は広くはありませんが、360度の大展望を得ることができます。
歩き回らず、一ヶ所に落ち着い前方て展望を楽しみましょう。後続
の人たちで混雑し始めたら下山にかかります。下り専用のハシゴで
一段下まで下り、その後は下り専用のコースを落ち着いて歩きます。
山の事故は下りに起きやすいため、岩場に張られたクサリは下りコ
ースの方が多いようです。また、渋滞があっても落ち着くことが大
切です。人をなじるような言動をする人は山に登る資格はありませ
ん。槍ヶ岳を訪れる人の多くは、槍ヶ岳山荘に到着してからと翌日
の早朝にそれぞれ登ります。午後と翌早朝の山頂では趣が異なりま
す。ぜひ最低2回は山頂を踏んでください。

●4日目 下山は距離が長く無理は禁物。(8時間30分〜)
 下山は往路を戻る必要がなければ上高地に向かうのが最も安全で
登山者も多く安心できるはずです。